コラム

パワハラを行う無自覚な人への対応法

前回に引き続き、ハラスメント防止研修後に受講生から寄せられた質問への回答をご紹介します。

Q 研修の中で触れていたパワハラの「無自覚的コミュニケーション」について、対応方法や自覚を促すテクニックを身につけたいのでコツを教えてください。

A 無自覚的コミュニケーションは大きく分けて2つあります。

1つ目は相手が不快な感情を持つことに気づけない(想像できない)パターン
(「愛情表現だった」「ふざけ合っていただけ」など)

2つ目は相手が不快な感情を持つことは想像できるが、自分のコミュニケーションが正しい(必要だ)と思っているパターン
(ミスをした人に対し怒鳴り散らしたが、それは相手が悪いんだから当然だと思っているなど)

1つ目のパターンの人は相手の立場に立てない、想像力が低いなどの特徴がありますが、無自覚な人には「嫌がっている」ことをしっかり伝え、自覚してもらう必要があります。

そのときにオススメなのが「Iメッセージ」です。

これは主語が「私」になるメッセージで、被害者本人ならば「~と言われると私は悲しい」「私はショックだった」「私は困ります」などの表現で、「私(主語)+自分の気持ち」を伝えます。
自分の気持ちを表現することになりますので、無自覚な人には気持ちを伝えることで効果が見込まれます。

逆に「私はこんな風にしてもらえたら嬉しい」「私はもし~なら助かる」など、そうなったら不快に感じないという具体的要求を仮定表現で伝えるのもよいでしょう。

一方、第三者ならば、「私だったら○○って言われるとこんな気持ちになるよ」「○○さんはもし○○になったらきっと嬉しいだろうね」などと被害者の気持ちを代弁し、自覚を促します。

 

2つ目のパターンはその人が信じている認知(考え)の修正が必要ですが、人が持っている認知を修正するのはなかなか容易ではありません。

研修受講者である質問者の方は「自覚を促すテクニックを身につけたい」と考えてくださっています。
一般的にハラスメントの注意はより上の人から行うことが多く、受けた被害者は直接本人には言えず関係上我慢していたり、相談窓口を利用するケースがほとんどです。

しかし同僚同士で無自覚なハラスメントを指摘し合える職場が作れたら、それは素晴らしい事です。

自覚を促すためには見かけた時にその場ですぐに声をかけましょう。
その際にはハラスメントとなる「具体的行動や行為」を伝えます。

「廊下に聞こえるくらい大声で怒鳴るのはハラスメントになりますよ」
「物を投げつけるのは指導とはいえませんよ」
などハラスメントに該当しそうな行動をハラスメントの定義に沿って客観的な視点から伝えます。

行為者は自分の行為が正当だと思っていますので反発するかもしれません。
その際にはその人の持っている認知は一旦横に置き、あくまでも「行為そのもの」を修正するよう促します。

一般的にパワハラをする人は
・厳しく指導した方が人は力を発揮する
・悪いのは相手(ミスをした、迷惑をかけたなど)であり自分は被害者だから許される
・今の(成功した)自分を作ってきた過去のやり方を踏襲すれば今後も成功する
・自分と一緒であるべき(自分も我慢してきたから相手も我慢すべき)
など様々な認知を持っています。

自分の信じていることを否定されるのは気持ちのよいものではありません。
「あなたの○○という考えはわかりますが、○○という行為はやめましょう」
「○○の状況は理解できるけど、○○ではなく~~にしたらいいと思う」
などの伝え方が良いと思います。

加えて勉強会などで一般的な事例として具体的なハラスメント行為を共有しましょう。
その例は実際にあった事例により近い内容だとなお効果的です。
行為者は自分に直接注意されているわけではないので素直に「気をつけよう…」と自覚できる可能性があります。

無自覚な人に自覚を促すには周囲の目と声かけが重要です。
職場は業務を適切かつ効率的に遂行できるよう働く人たちが協力すべき場であることを私たちは認識し、声かけや勉強会を通じてみんなで注意を促せる職場を目指したいものですね。

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